日本協会の「変革」のゆくえを知りたい
日本バドミントンはどう変わる?
(2002.11.13 All About Japan バドミントン初出記事を再録)
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toto(スポーツ振興くじ)の収益金による助成事業、『スポーツ振興基本計画』、『JOC
GOLD PLAN』により変革を迫られる日本のバドミントン競技。「変革」の正体とは? 情報を整理してみます。 |
バドミントン・マガジン2002年11月号に特別企画として紹介された、日本バドミントン協会[緊急座談会]「改革」のときを迎えて。読まれましたか? 予備知識なしには、難しい内容だと思いましたが、いかがでしょうか。
私は数日かけて読んだのですが、知識不足のためか、「日本協会が忙しくなるようだ」との印象が強く、うまく理解できませんでした。しかし、とても重要な問題のようです。そこで、私なりに調べることにしました。(まず、[緊急座談会]中の"寄付行為"は、財団法人の根本規則を意味するようです。)
今後、国家レベルでの取り組みのために、各種競技団体とともに日本バドミントン協会が挑戦していくプロジェクトについて整理してみたいと思います。
toto(スポーツ振興くじ)導入の法案審議過程で国レベルでの『スポーツ振興基本計画』策定が計画される。
文部科学省 保健体育審議会 答申 2000年9月
スポーツ振興基本計画
(1)生涯スポーツの環境整備
(2)国際競技力の向上
目標 世界で活躍できる競技者の
育成・強化を積極的に推進
五輪でのメダル獲得率を倍増
財源 国の一般会計(引用1)
スポーツ振興基金
toto(スポーツ振興くじ)の収益金
施策 1.一貫指導システムの構築(引用2)
2.トレーニング拠点の整備
3.指導者の確保・養成
(専任化の促進)
4.競技者、指導者のための環境整備
(3)学校体育の充実
文部科学省の『スポーツ振興基本計画』を受けて、「10年間でオリンピックでのメダル獲得率を倍増」実現のために日本オリンピック委員会が動いた。
日本オリンピック委員会(JOC)『JOC GOLD PLAN』
(JOC 国際競技力向上戦略) 2001年4月(引用3)
カテゴリーONE 必要不可欠な施策
1.強化プログラム
(1)アスリートプログラム
・エリートプログラム
・ユースエリートプログラム
(2)ナショナルスタッフプログラム
(3)ナショナルコーチアカデミー(将来)
(4競技者育成プログラム(2005年までに)
2.環境整備プログラム
(1)拠点・ネットワークプロジェクト
(ナショナルトレーニングセンター)
(2)「企業とスポーツ」プロジェクト
(3) Gold Start
(引退後の生活を支援するキャリアプログラム)
カテゴリーTWO 側面からバックアップする施策
1.スポーツ医・科学の推進
2.アンチドーピング活動の推進
3.国際大会開催支援
カテゴリーTHREE JOC 独自の施策
1.重点強化施策
(1)オリンピック大会対策特別プロジェクト
(2)競技団体へのサポート
(3)アスリートへのサポート
(4)スタッフへのサポート
2.JOC 選手強化本部機構
3.プロジェクト施策
(1)情報・戦略プロジェクト
(2)競技間連携プロジェクト
(3)医・科学サポートプロジェクト
4.競技力向上につながる国際力の強化
JOC の加盟競技団体である日本バドミントン協会も他の競技団体とともに『JOC GOLD
PLAN』実現に向けて努力を求められる。
『JOC GOLD PLAN』の『競技団体の評価基準』が競技実績+強化環境整備となった。 2002年
「あくまでも結果を出すのは各競技団体。」(引用4)
結果がJOC からの補助金などに反映されるため、五輪メダル獲得のための対応は待った無しとなる。
また、toto(スポーツ振興くじ)の助成対象(引用5)は、
競技団体の競技者育成プログラム運営(引用6)
ブロック運営費
となっているが、2005年までに競技者育成プログラム(一貫指導システム)を完成させなければ JOC からの補助金が減額される。(引用7)
現在、日本バドミントン協会の『JBA ジュニアプロジェクト』の取り組みは、「バドミントンは早期に強化指定選手を発掘し、徹底した強化プランをすでに実行に移している。小学・中学生連盟に2名ずつの強化部員を派遣し、その年代から将来有望な10名の強化指定選手を絞り込み、世界の大舞台を経験したナショナル・クラスのコーチが直接指導している。」と高く評価されている。(引用8)
[緊急座談会]によれば、加えて、スポーツ振興基本計画に沿って、ブロックごとの小中高合同の合宿、指導者の確保・養成と指導者組織の1本化などが構想されているもよう。
JOC選手強化本部も競技団体にすべてを任せるというわけではなく、現場に足を運び、声を集めて、有効なアシストを決意している。
2001年・2002年 JOC選手強化本部の基本方針
(引用9)
1.現場主義
2.競技団体間の連携強化
3.男子種目の強化
4.学生スポーツ・企業スポーツの活性化
5.たくましい選手の育成
いかがでしたでしょうか。完璧ではありませんが、少し、実像に近づけたかもしれません。「会員すべての理解と協力が必要です。」というプロジェクトですが、ジュニアに重きを置かれることもあって、理念が浸透するためには根気強い広報が必要のようですね。しかし、将来に誇れるプロジェクトの発進に立ち会っているのかもしれません。
最後に、ここまでの文献で触れられていなかった面について、私の個人的希望を書いてみたいと思います。
情報発信、情報分析の人材確保に予算の充実を
『JOC GOLD PLAN』のカテゴリーTHREE にうたわれる「競技力向上につながる国際力の強化」(引用10)は、今の国際的バドミントンの状況を見ると、他競技に劣らず、対応していきたい分野だと思います。
ルール改正、審判規定、参加資格などが検討される『国際バドミントン連盟 IBF』や『アジアバドミントン連盟 ABC』に日本代表理事を派遣し、日本の競技者の声を伝えて議論に参加してほしいです。(得点システム、混合ダブルスの五輪種目残留についてなど。)
JOC 会長の竹田恒和氏は「各競技団体がそれぞれの国際競技連盟の中で発言力を持つことが基本」と指摘し、その問題点についても言及しています。(引用11)
公正な審判のあり方についても、日本人の姿勢は世界をリードできるのではないでしょうか。
語学力向上プログラム(引用12)を受けるエリート選手と同等以上の達者な交渉スキルを持った代表を期待したいです。
『JOC GOLD PLAN』実現のために設置された『情報・戦略専門委員会』の活動として上げられている「選手・スタッフ・諸組織の実績に対する評価認識、評価基準のポイント制による明確化」。(引用13)これは、現行の日本ランキング制度が該当しそうです。
ここまでの経緯では、どうしてもジュニアに重きをおいた活動に光が当たるようですが、選手のモチベーションを高く保つためにも、国内ランキングによる代表選考を維持してほしいです。
また、バドミントン日本選手の世界ランキングを上げ、五輪での出場枠最大確保のために戦略を練る部門の活躍についても知りたいと思います。
各都道府県代表レベルの選手やコーチにはおなじみかもしれない日本バドミントンについての情報も、一般の会員にはほとんど伝えられません。大会に参加するために協会費を払っているという意識は、"心を開いて"という状況と離れたものです。バドミントン協会会員ばかりでなく、toto購入者も選手強化の進行を知って楽しみ、喜べるような開かれた情報公開を望みます。
現在のバドミントン報道の現状では、大手一般マスコミの報道に頼っていては、不十分です。『日本バドミントン協会』のウェブサイトのいっそうの充実により、日本国内はもとより、国外に向けての発信が求められていると思われます。
『JOC GOLD PLAN』カテゴリーTWO の「国際大会開催支援」から、ヨネックスオープンジャパンの大会サイト開設を目的としてウェブサイト管理の予算がつくといいですね。
また、愛好者、支援者のためのメールマガジン発行は検討に値するのではないでしょうか。月刊でも季刊でも、たとえ年1度でも、その意味は大きいです。
ボランティア的な業務に頼らず、ウェブ担当チームの人数を増やすこと、一人の負担を軽減することが必要になっているように思います。
加えて、四半期ごとくらいの頻度で、今回のような広報記事をバドミントン・マガジンに紹介して頂けるとうれしいと思います。
(引用1)OLYMPIAN 2001年4月号 P.4
オリンピックへの期待と
スポーツ環境の整備
「独占インタビュー 町村信孝文部科学大臣」
(引用2)OLYMPIAN 2000年12月号 P.29
豪州の躍進と21世紀の日本
「日本のメダル倍増計画」
(引用3)OLYMPIAN 2001年8月号 P.16
[特集]JOC GOLD PLAN
日本再生のシナリオ 前編
「JOC GOLD PLANの三本柱」
(引用4)OLYMPIAN 2002年8月号
[特集]平成14年度コーチ会議
「国際競技力向上への指針」P.12
(引用5)OLYMPIAN 2002年11月号 P.11
[特集]一貫指導システムを構築する
「一貫指導システムなくして21世紀の
スポーツ界で勝ち抜くことはできない」
(引用6)OLYMPIAN 2002年11月号 P.4
インタビュー
日本オリンピック委員会会長 竹田恒和
「各競技団体に対する助成金の使途は
若い選手の育成・強化とされており、
各競技団体が一番希望している
トップ選手への強化には充当できない
という問題があります。」
(引用7))OLYMPIAN 2002年11月号 P.14
[特集]一貫指導システムを構築する
日本レスリング協会
一貫指導システム導入奮闘談
「有力な理解者を得た後は、
ひたすら説得を続けました」
(引用8)OLYMPIAN 2001年9月号 P.16
[特集]JOC GOLD PLAN
日本再生のシナリオ 後編
2005年の完成を目指す
「一貫指導システム」
(引用9)OLYMPIAN 2001年12月号 P.13
[特集]平成13年度コーチ会議
JOC選手強化本部の基本方針
「現場主義を掲げて
アテネ・オリンピックを目指す」
(引用10)OLYMPIAN 2001年8月号 P.18
「JOC GOLD PLANの三本柱」
(引用11)OLYMPIAN 2002年11月号 P.5
インタビュー
日本オリンピック委員会会長 竹田恒和
(引用12)OLYMPIAN 2001年8月号 P.16
「JOC GOLD PLANの三本柱」
(引用13)OLYMPIAN 2001年12月号 P.16
JOC GOLD PLAN
「成功のカギを握る"情報"と"戦略"」
【関連リンク】
*ベースボールマガジン社
『バドミントン・マガジン』や
JOC広報誌『OLYMPIAN』などを発行。
*カレント・コラム
『科学・医学・情報によるサポートを活かしていこう
国立スポーツ科学センターの誕生』
*日本バドミントン協会
JBA
ジュニアプロジェクト
*(財)日本バトミントン協会の
業務・財務に関する資料
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